わたし、常盤（ときわ）
今日は秘密のお話するわね
あなたは　秘密を持ってる？
誰にも言えない秘密

わたしは　好きな人がいるんです
彼は本当に純粋で
本当に澄んだ瞳をしていてね
わたしは
彼の瞳に吸い込まれていったの

彼は　わたしのこと
ただのおばさんとしか
思っていないと
わたしは　思い込んでいたけれど
彼は違ったみたい

彼もまた　わたしのことを
本当に　純粋でこどものような人だって
思ってくれていたの
わたしのような　おばさんに向かって
かわいいねって　褒めてくれた

わたしは　自分が女性だったということに
氣がついたの
顔がほてっていって
体中に電氣が走るような
そんな　感情がよみがえってしまったの
忘れかけていた　感情を
彼によって　思い出してしまったの

ずいぶん長いあいだ
わたしは女性であることを
感じないように生きてきた
わたしは　ずっとずっと
誰かのために　自分という人間を
ひたすら　合わせて　生きてきた

自分が女性という性別で
あることすら
役割をひたすら
演じていく中で
いつの間にか　消していた

そんなことすらも
わからなくなるなんて
わたしは　一体
何のために　誰のために
この世で生を受けているのだろう
そんなふうに
考えたことすらなかった

でも　彼と出会ってからというもの
自分がこんなにも
たくさんの　自分じゃない
人間になろうとしていたことに
氣づいた

わたしは　今
わたしという人間を
見つける旅に出ているの

わたしは　もう誰のものでもない
誰のためにも　生きたくない
自分のためだけに
生きていきたい
わがままかもしれないけど
今強烈に
そうしたいと思っているの

そして　彼に今どうしても
会いたくなっている
それは　誰のものでもない
わたしが望んでいる
それをわたしは
叶えたいと思っているの

それって悪いことなの？
それってだめなことなの？
自分だけのために
生きることは
本当のわたしに
なることなの

もう自分以外の
何者にも
わたしはなりたくないの
もう二度と

良かったら
あなたの秘密も教えてくれないかな？